海外移住のノウハウや作業手順

「海外に移住する」…なかなか身近に例がなく、何からやったらいいか分からないという方がほとんどではないでしょうか。私自身がそうでした。失敗談も含めお知らせしたいと思います。

目次

出国日の設定

まず最初にやるべきは、出国日の決定です。

移住準備にどのくらい時間がかかるか全く予測できないのに決めるなんて難しいのですが、確定しないとスケジュールが立てられません。航空券予約、現在住んでいる賃貸アパートの契約解除、会社退職、保育園退園なども、日にちを明記しなくては手続きできませんでした。

我が家の場合、移住先のフィリピン・セブ島の新学期スタートは6月です。それまでにセブの生活にも慣れておく必要があります。

そこで航空券の価格が落ち着きそうなゴールデンウィーク終了翌日に、私が一人でセブに渡り、視察を兼ねて新生活の準備を一週間で行なうことにしました。そして、一度日本に戻り、翌日にとんぼ返りで、今度は家族と共にフィリピンに入ることにしました。

一日だけの日本帰国なんて不経済ですが、幼い子三人を飛行機に乗せるのは夫一人では不可能なので、しょうがありません。

ただ、あの頃は、出国日を確定していいか自信がもてませんでした。
『下手に日を決めて手続きを進めてから、どうしてもずらす必要が出てきたらどうなるの?』
『準備が間に合わなくて、出国できない状況になったら?』
不安になりました。

それでも「えい、やっ」と決めてしまいました。そうせざるを得ません。

退職連絡

移住に伴い仕事を辞めるのであれば、引継ぎなどがあるため、退職の意思と日程を早めに会社に報告しましょう。

我が家はこの点で一つ失敗しました。出国より半月前に退職する、と夫の会社に伝えてしまったのです。

出国前は移住準備に集中したいと思ったからですが、当時、うちの子どもたちは3人とも認可保育園に通っていました。子供を預けるには、私たち夫婦は共に「仕事の事情で保育に欠ける」必要があり、夫の退職以降は子どもたちは保育園に通うことができません。5歳以下の3人が在宅すれば、我が家こそが保育園のような状態で、移住準備に大きく支障が出ます。

会社に退職日を伝えてすぐに気付き、慌てて「出国前日に退職」に変更させていただきました。退職日前に夫は有給休暇の消化で休みをとり、移住準備ができました。

移住サポート会社に依頼

海外移住先についてご自身が詳しく、相談できる先もあるなら不要かもしれませんが、そうではない場合は移住サポート会社に依頼すると良いでしょう。

私は、行ったことがないフィリピン・セブ島について調べるうちに、日本人が現地で経営する移住サポート会社の存在を知りました。早速メールで連絡し、まずはサポート費用の半額を振り込み(残りは現地到着後に払わせていただくことにし)、移住に向けた多様な相談にのってもらいました。

日本国内の移住とは異なり、海外移住なら自分が外国人になる点や、思いもよらない慣習や法律の違いが存在することに注意が必要です。

日本居住と異なる点【フィリピンの場合】

  • 家具無しの賃貸住宅はほとんどない。賃貸住宅のほぼ全てに家具が備え付けられている。
  • 公立の幼稚園や小学校に、外国人である日本の子は入れない。私立校を選んで手続きしなくてはならない。
  • 外国人は一軒家を買えない(マンションの中の一戸を買うのは可能)

現地の幼稚園調査

ただ、準備を業者に頼ってばかりでは費用がかさみます

幼稚園の選定サポートは別料金だったので、自分でやることにしました。セブに住む日本人の方が日本語で書いたブログを中心に幼稚園名をピックアップし、各園の公式サイトをチェックしました。英語で書かれたサイトなど今まで見たこともありませんが、海外に住むことを考えれば避けていられません。

その作業を進める中で、我が家が幼稚園を選ぶ際の優先順位を決める必要に気づき、それを元に比較表を作ってみました。我が家が重視したいのは、プログラムの内容や雰囲気、預かり時間の長さ、金額、自宅からの距離です。

ただ残念ながら、セブ島の幼稚園はインターネット上で料金表を公開しないのが慣例です。

金額他を訪ねる質問文を英語で作って各幼稚園にメールで問い合わせしても、金額については「見学にいらしたら価格表を渡します」という回答ばかりでした。その点は諦めざるを得ないかもしれません。

日本の賃貸住宅から退去準備

私たちは日本で賃貸アパートを借りていました。解約のため契約書を確認したところ、ひと月前までに契約解除日を書面で申し入れること、解除日の変更は不可能であることが分かりました。解除日には退去立ち合いのチェックを受けるため、それまでに室内をカラにして、原状回復しておかなくてはなりません。

でも、セブに持って行くものを段ボールに収納しても、現地の送り先住所が未定のうちは発送できません。それまで、段ボールをどこに置いておけばいいのでしょう。さらに、日本滞在最終日まで子どもたちは保育園に通います。着替えなど一通りの園グッズを毎日持たせなくてはなりません。当然洗濯も必要です。自宅をカラにするため、タンスも洗濯機も先に処分するのに、どうしたらいいのでしょう。全てが不可能に思えました。

すると、近所に住む私の両親が、居候(いそうろう)を提案してくれました。父と母は、私と夫が心を一つにして移住すると決めたのを受け、快く協力してくれるようになっていました。そして居候中、料理も保育園送迎もすべて引き受け、私たちがぎりぎりまで仕事を続けながら移住準備もできるように配慮してくれました。セブに発送する段ボール10箱も、セブの住所が確定するまで預かってくれることになりました。

両親に移住を反対されていた頃は私も興奮し、
「夫と離婚して、私と子どもだけでセブに移住だってできるんだから。お父さん、お母さんがどんなに反対しても無駄よ」
などと反論していただけに恥ずかしいのですが、両親のこの助けが無ければ移住準備はできなかったでしょう。さらに、まだ目も手も離せない5、3、1歳の孫のために、セブまで同行し、現地に2週間滞在してくれることも決まりました。大変助かりました。

一般的には、早めに海外の現地に行って賃貸契約をし、一度日本に戻って荷物を発送、日本の住宅解約。そして、荷物が海外現地に到着するまでには自分達も海外にいるようにする、という手順となるでしょうか。

銀行口座開設

海外で暮らしてお金が足りなくなったら、日本に残してある口座の現金を海外に送金することが考えられます。そうしたことができる銀行口座を持っていなければ新たに開設する必要があるでしょう。

理想の銀行は、海外に居ながらインターネットを使って
・振り込みや入出金チェックができて、
・海外の自分の口座に送金もできる
ものです。ただ調べると、2014年当時、ほとんどの銀行が、海外送金は都度、本人が窓口で手続きしなくてはなりませんでした。

私が口座を持っていたネットバンクSBIには外貨送金サービスがあるので安心していましたが、フィリピンはSBIの外貨送金サービスの対象になっていないと出国日が近くなってから気づき、慌てました。

我が家の理想にかなう銀行など存在しないのでは、と半ば観念しながら他を探して見つけたのが楽天銀行。理想の条件を満たしていました。急いで口座開設手続きをし、無事、出国前ギリギリに完了。楽天はネットでほとんどの手続きを済ませられるので、開設手続きも他の銀行に比べてとてもラクでした。

ただ、保険などの引き落とし口座としてネットバンクを利用できないケースは多く、ネットバンクの普及や信頼はまだ十分ではないのかなと感じます。

まさか、海外に移住するタイミングで、新たに日本の銀行口座開設が必要になるとは思いませんでした。ネットバンクのサービスは年々変わっています。ご利用の際は最新情報をご確認ください。

クレジットカード準備

クレジットカードは海外で必需品です。私がそれまで使っていたのは、地元の会社が発行するVISA提携カードでした。「利用額に応じて商品券が自宅に送られてくる」ことが特典でしたが、商品券は地元でしか使えないものでしたから、これを機に退会することにしました。

そしてこの度、楽天銀行に口座を開設したので、楽天系列のクレジットカードに加入しました。申込み手続きは簡単でした。

ところが、うっかり確認ミス。私が選択したカードは、ひと月に使える上限がたったの10万円に初期設定されていたのです。気づかぬうちに限度額を超えていて、セブ島の店頭でクレジットカードを提示しても「利用できないようですが?」と言われるようになり、バツの悪い思いをしました。理由に気づくまでに時間がかかりました。

銀行口座閉鎖

自分が持っていた銀行口座のほとんどを閉鎖することにしました。海外に居たら記帳できず、管理に支障をきたすからです。閉鎖は窓口で行うしかないので、日本にいる間に、とすぐに銀行を回り始めました。

閉鎖はタイミングが難しく、なにかの引き落としに指定している口座については、先に引き落とし口座の変更手続きも必要になります。時間がかかるのでご注意ください。

国内の住所変更

私たちがセブに移住後は日本の住所として両親の家を指定させてもらうことにし、住民票を実家に移しました。この作業を後回しにすることはできません。新しく開設する銀行口座も、期限が切れていて取り直すパスポートも、子どもたちの学資保険や私たちの年金保険関係も住所が必要です。

でも、住所を変更したことで面倒は増えました。間もなく使わなくなる日本の運転免許証の住所変更が必要で、そのために警察に行かなくてはなりませんでした。また、もう使っていない銀行口座を閉鎖するためにも、まずは住所変更申請書を書かなくてはならず、作業が倍になりました。

服の発送

服を海外に発送するかは、送料が安くないので迷いました。でも、移住後すぐの忙しい時期に、我が家の場合は子ども三人それぞれに購入する時間を節約できると考えて発送することにしました。常夏の地なので、夏服だけを選んで段ボールに詰めました。費用節約のため郵便局の「船便」を選択しました。

ところが郵便局の船便は、郵便局のサイトに書かれていたより3倍も時間がかかり、2014年時は到着に3か月かかりました(2021年2月に北海道から発送した荷物は航空便を選び、10日後に着くと書かれていたが40日後に到着)。サイトに書かれているのはフィリピンの首都マニラ宛の日数のようで、そこからセブに来るのに時間がかかります。

そのため、子どもたちが移住日に着用していた服と、スーツケースに入れていた数枚の着換えではすぐに足りなくなり、相当数を結局は購入せざるをえませんでした。また、就学前の子どもは大きくなるのが早いので、届いた服は既に少し小さくなっていてもったいないことをしました。

車の処分

日本で車を所有していた我が家は、自動車税を年一括払いの口座引き落としにしていました。移住を決めた後、すぐに手続きすれば引き落とされずに済んだものを、すっかり忘れていたため、車の処分直前に向こう一年分の税金が引き落とされてしまいました。

車を引き取ってくれた業者さんが、11カ月分の車税を現金で還元してくれたので助かりました。

まとめ

ご家庭によって海外移住に必要な準備は大きく異なるでしょう。移住完了までにやらなくてはならないことを事前にピックアップすることも大変な作業です。

まずは思いつくものだけを書き出して冷蔵庫に貼っておいたり、ご夫婦で共有のネット上のデータなどに置いておくと良いと思います。ふとした瞬間に追加作業が思い浮かびますので、どんどん追記していきましょう。

当初は全て終わるのが想像できないほどの量になるかもしれませんが、ご自身の目的や夢に向かって頑張っていきましょう。 

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