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「子供を英語バイリンガルにするには教育移住すればよい!と気づいた日~教育移住日記①」からぜひお読みください。
再び残念な発表会
太郎は、10日間の休暇が明けた11月から年長クラスに移った。移住して半年で、ようやく年齢相応のクラスだ。学期の節目ではないため、昇級した一週間後に、学習発表会に参加しなくてはならなかった。
セブ郊外の山の中腹にある自然豊かな公園が会場となった。保護者の前で子どもたち一人ひとりが、自己紹介と学習成果を一言ずつ発表し、その後みんなでダンスを披露するプログラムだ。
だが太郎はまた、ほとんどできなかった。
自己紹介は聞こえなかったし、学習成果は答えられないので、太郎のパートだけは先生が代わりに話した。ダンスは、一生懸命周りを見てあわせようとしていたが、一人だけ全く踊れていないのは明らかだった。
それでも発表会の会場に嫌がらずに行き、私の手をひかずにステージに立てたのだから、以前より良いかもしれない。上手くできなかったのは、新しいクラスに入ってすぐだからしょうがない。
しかし、そう頭で分かっていても「いつまでこんな悲しい発表会を経験しなくてはならないのか」と私の気持ちは沈んだ。保護者たちが持ち寄ったスパゲッティーやドーナツを無邪気に食す太郎の様子が救いだった。
親は過敏になる必要なし
ところで、この年長クラスには軽い自閉症のフィリピン人の男の子がいて、常に専属の先生(シャドーティチャー)が見守っている。私はその子と先生を何度か目にしたはずだが、二人の関係にも、その子の障がいにもしばらく気づかなかった。発表会のステージでもきちんと名前を言えているし、誰もその子を特別扱いせず、一緒に学び、遊んでいる。
このクラスの子13人はみな、肌・目・髪の色も、体格も、母語も文化も生まれ育った国も、その他の面でもバラバラだ。大人だと身構えてしまう相違を、この子たちは全くそうとは受け止めず、友達を純粋な目で見つめ、心を開いて積極的に関わろうとする。
クラスメイト達は、年長ともなると友達の様子も目に入る。「お世話したい」「関わりたい」と思うようで、太郎に対しても朝は必ず「ハーイ、タロウ」と声をかけてくる。
しかし、太郎は失礼なことに、聞こえないふりをして私を慌てさせるのだ。最近ようやく、相手に両手のひらを向けてハイタッチ(英語ではハイファイブ)で応じるようになった。でも断固として口は開かず、相手の子の名前すら発しない頑(かたく)なぶりだ…。そんな奇妙な太郎に、翌朝また「ハーイ、タロウ」と声をかけてくれる気のいいクラスメイトばかりで有り難い。
言葉を発するまで長い期間、黙り続ける外国在住の日本人のお子さんの例を私は、文献で読み知っていたので、太郎の「英語」を心配してはいない。いつか必ず話し出す。
むしろ、なかなか英語が話せず苦労しているこの時期のことを、そして皆さんから受けている数々の好意を、太郎がどう受け止め、成長に生かしていくかが楽しみだ。
太郎には、場になじめず寂しい思いをしている子がいたら、気づいてそっと配慮してあげられるように育ってほしい。いや、きっと育つだろう。太郎には、その子の気持ちが切ないほど分かるはずだから。
親は過分に、我が子がみなさんに迷惑をかけていないかと心配する必要は全くない。子どもは、たくさんのことを子ども同士から学ぶ。大人は先回りし、効率を優先しがちだが、それでは子どものかけがえのない学びの機会を奪うのではないだろうか。(続く)
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