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「子供を英語バイリンガルにするには教育移住すればよい!と気づいた日~教育移住日記①」からぜひお読みください。
太郎の入試(=卒園テスト)
年長クラスに入っても、太郎の英語と、友達との関わり方に特に進展は見られず、私はやきもきした。
そして年も替わって2月に入り、いよいよ年長クラスの生徒が卒園テストを受ける日となった。テストで合格点を取らないと正式な卒園証書はもらえない。隣接する私立小学校(姉妹校)に入学を希望している太郎にとっては、入試にあたるテストだ。
算数、英語、理科の3つのテストが3日間にわたって実施される。太郎は相変わらず自宅では勉強しないし、親としても無理に勉強させることもないまま、あっという間にテスト期間を迎えた。
算数のテストの日、太郎を迎えに行ったら、担任のマーベル先生が話しかけてくださった。
太郎はクラスで2番目に早く終えて、提出したという。先生が「どうだった?」と聞くと、「イージー(簡単さ)」と答えたそうだ。不遜(ふそん)な言葉に聞こえて私は恐縮した。先生は「レース(競争)のように早く終わらせようとするのは生徒全体の傾向だ」と苦笑していた。
先生と私は、太郎の得意な算数で、英語と理科をカバーできればいいがと話して別れた。
テスト期間が終了した翌週、先生に呼ばれた。太郎を含むクラス全員が合格できたという。良かった!
先生は太郎の答案用紙を前に一つ一つ、太郎が間違えた個所を説明してくれた。
驚いたことに、英語はほぼ満点だった。
「ピーターはペットとして鳥を飼っている。ペットはかごに入っている」「水の中にいる動物」などの英文を読んでそれを絵で描き示すことも、バスの中に子どもがたくさんいるイラストと虫食い状態になっている英文を見て、前置詞を「in, out, beside」から選ぶこともできていた。
間違えたのは、「あなたの年齢を四角のマスの下に書きなさい」という明らかなひっかけ問題だけで、太郎はマスの中に大きく6と書いていた。これなら大人でも間違えただろう。0.5点のマイナスだった。理科も数か所の間違えで済んだ。
一方、算数は悲惨だった。+と-を見間違えるようなポカミスが何か所もあり、危うく算数が足を引っ張って、太郎は不合格になるところだった。レースからは降りて、見直しの大切さを認識させる必要がある。
「英語のおかげで合格する」という予想外の結末に、先生と私は笑った。
ただ、よく考えれば不思議ではないのかもしれない。クラスメイトのほとんどは、幼稚園の生活に不便を感じることがないので家庭教師を受けていない。英語のテレビを見聞きしているようで、英語の発音はきれいだし、英語ネイティブの話し言葉も理解できるが、文法という面では弱いのかもしれない。
太郎は家庭教師の時間にプリントに取り組んでいるので、英語のテストは得意なようだ。
初めて英語で発表できた!
長い春休みに入る直前の3月上旬、太郎の学習発表会が開かれた。今学期に学んだ「太陽系」について、一人ひとりが発表するものだった。
担任のマーベル先生に当てられた子が、保護者らが見つめるステージに立ち、与えられた質問に、そらで説明していく。どの順にどんな質問で当てられるかはすでに決まっているようだが、それでも太郎がこなせるとは思えず、クラスメイトが順に発表していく様子を見ながら私の心臓はバクバクしていた。
女の子が、緊張のあまり声が小さくなってやり直しさせられたり、男の子が「僕、何を言うか忘れちゃったよ」とステージ上でへそを曲げ、5分ほど口をきかなくなったりして、英語力に問題がない子にも難しすぎる設定にみえた。過去2回のみじめな太郎の発表会が脳裏をよぎった。
とうとう太郎の名前が呼ばれ、私の心臓は止まりそうになった。ステージの真ん中に一人で出てきて、保護者たちと対峙する太郎。マーベル先生の「タロウ、木星について説明しなさい」という指示にうなずくと、空(くう)の一点を見つめながら緊張した面持ちで、でもはっきりと大きな声で話し出した。
「Jupitar is the biggest planet in the solar system. Many planets can fit into it.(木星は太陽系の中で最も大きな惑星です。多くの惑星が木星に吸い込まれます)」
太郎が人前で、英語で発言できた!しかも堂々と、はっきりした声で。
拍手を浴びながら、太郎はステージ端のクラスメイトの列に戻っていく。私は驚きのあまり、目を見開いたまま太郎を見つめ続けていた。それに気づいた太郎がふきだし、自分の出番が終わって余裕ができたこともあってか、いい笑顔を返している。
太郎は確実に成長していた。こんな大変な発表があるのを事前に家族に気取(けど)られずにこなしたことも、成長の証(あかし)に思えた。
涙の卒業式と一年の振り返り
その数日後、近隣の大学の講堂を借り切って、卒園式が行われた。卒園生は白いトーガ(マントと帽子)をつけている。呼ばれて一人ずつステージに上がると、男の子は紳士のように片足を後ろに下げて、女の子は淑女のようにスカートを両手でつまみもって、客席に向かって頭を下げた。
いったんステージから降りて、今度は卒園証書授与。校長から一人ずつ受け取る時には、なんと両親も一緒にステージに上がり拍手を浴びる設定だ。それを知らなかった夫と私は、人前に出る準備ができていなかったので慌てた。
次郎と花子を含む在園生による踊りが披露された後は、本日の主役である卒園生の出し物。
男の子はネクタイ姿、女の子は華やかなドレスに着替え、男女ペアのダンスを披露したり、各卒園生の家族や赤ちゃんの頃の写真がスライドで映しだされたり、卒園生一人ひとりがマイクを持って、両親に感謝の言葉を述べるサプライズがあったりで、楽しく感動的だった。
私はステージ上の太郎が誇らしく、一時も目を離せなかった。
はっきり言って、太郎は一年度目は友達とコミュニケーションがままならずに終わった。クラスメイトに英語で話しかけられると、太郎の表情はこわばってしまう。友達みんなが楽しそうにおしゃべりしている輪を、常に一歩後ろから寂しそうに見ている。
卒園式の会場に向かう時まで「どうしたら僕にも友達ができるかな」とつぶやいていて、かわいそうだった。
まだ幼いから、外国の幼稚園でもすぐに楽しく過ごせると私は思っていたが、太郎に関してはそうはいかなかった。
花子はクラスになじんでいる。年少クラスの次郎も、クラスが楽しくてしょうがない。
次郎の話す英語は語順がメチャクチャだが、この年齢で家庭教師を受けるクラスメイトはいないからか、「お勉強ができる」と先生によく褒められる。「簡単に学年を落とされるフィリピンの幼稚園~英語教育移住日記⑩」に書いた通りで、次郎には飛び級の申し出もあったくらいだ。
次郎のクラスに、日本人のお子さん数人が続けて転入してきたのもラッキーだった。次郎の英語の拙さが目立たなくなり、転入生のお世話ができるため、保護者や先生に頼られている。おかげで自己肯定感が高まっているようだ。
一方、太郎の場合、「クラスで一番話さない子」のスタンスは最後まで変わらなかった。日本人の転入生が他にいなかったから、太郎を頼りにする人はいない。太郎は、日本語と比べ物にならないほど語彙も表現力も乏しい英語を相変わらず口にしない。
太郎の年齢になると、友達と言葉でコミュニケーションをとりながら遊んだり、クラスの取り組みとしてディスカッションしながらプロジェクトを進めたりするので、ハードルは高い。
太郎に関する嬉しい驚きとしては、セブに居ながら日本語の本を読み続けて、語彙を増やしていることだろうか。「花子、そんなにかわいくしたら、みんなが見とれるんじゃない?」「次郎、少し頭を冷やしたほうがいいよ」など、日本にいた時には使わなかった表現もいつの間にか習得して口にする。
太郎のセブ二年度目となる小学校の生活には、どんな成長や困難がみられるのだろう。全く予想がつかないが、太郎にとって楽しい年になることを心から願う。(続く)
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